機械の性能と医療の質は比例するのか
1万人以上のがん患者を治療する放射線治療専門医が語るがん治療最前線
■手術するロボット・ダヴィンチの問題点とは
内視鏡を使って手術するロボットとして「ダヴィンチ」が注目されています。
技術的には、遠隔操作で、大阪にいる患者さんを東京から治療するということも可能でしょう。
現段階でダヴィンチは、前立腺がんと腎臓がん(腎部分切除)の手術で保険適用となっています。目新しさも相まって患者さんが多く集まっていますが、問題がないわけではありません。
いくら患者さんが集まっているとはいえ、もともと機材が高額なのとメンテナンスにお金がかかるので、どうしても赤字になってしまいます。また、患者さんにとっての問題は、コストを賄うために手術件数を増やす必要から、今までなら放射線治療を紹介していた患者さんでも手術をより強めに説明するようになることです。
ヨーロッパではダヴィンチがコストのかかる治療として「廃れていく」と言われています。日本人は新しい機械にすぐに飛びついてしまう傾向にありますが、もしかしたらダヴィンチ導入は失敗に終わるかもしれません。
また、ダヴィンチばかり使っていれば、開腹手術に不慣れな医師に育ってしまうことも懸念されます。内視鏡を使って手術していても、何か不測の事態が起きたときにはすぐに開腹手術に切り替えなければなりません。そのレスキューができない医師が増えてしまうことが問題です。
<『最新科学が進化させた世界一やさしいがん治療』より構成>
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